saitama univ.

20年度報告書 ---具体的内容


 

求める成果および効果等

本委託業務が求める成果としては,従来から行われてきた専門教育と実習によるものづくり教育にタンジブル型VR環境を活用した体験学習を融合することにより,ものづくり知識と技能の獲得を効果的に行うことができる教育体系を構築することである.また,複数の技術者とともにコミュニケーションしながら,加工法や成果物のデザインレビューを行えるようなシステムを構築することである.高度なものづくり技術を,VR技術,力覚呈示装置,コンピュータシミュレーションを利用して,実際のものづくり現場作業を多角的かつ定量的に体験する環境を実現することを委託業務目標とする.
 本委託業務の効果として,本委託業務により教育された学生が社会に出て技術者として従事した時,高付加価値製品を設計・製造できる能力を発揮できるとともに,基盤技術や熟練技能の伝承,人材育成の重要性を認識し,生産活動を遂行することができる,優れた技術者となると考えられる.
本委託業務は,VR空間での技術者・技能者間のコミュニケーションによる技能伝承と知識創出のための枠組みの提案とこの枠組みに沿った技能伝承・訓練システムを開発することである.技術文書などの形式知はマルチメディアを利用して効率的に獲得し,技能などの暗黙知はVR技術を利用した立体視システムおよびロボット技術を用いた力触覚呈示装置を連携して使用することで,実際の現場作業の視覚的および力触覚的な擬似体験を通じ技能を獲得することのできるシステムを開発する.それらを複数の技能者間のコミュニケーションをまじえ体験することも重要であり,VR空間において,複数の技術者・技能者が入り,この中でコミュニケーションをとりながら協働で設計・製造知識を獲得できるような環境,つまり,経験豊富な熟練技能者とともに効果的なOJTを行っているかのようなバーチャルな環境を創り出し,これにより効果的な人材育成を行えると考えている.例えば,鋳造の突き固め作業は,金枠や木枠に投入された時硬性の砂をスタンプと呼ばれる突き棒で素早く突き固める作業で,鋳型の強度を確保するために行われている.時硬性の砂が硬化を始める前に,枠内の砂の充填度を高め,かつ,砂の密度が均一になるよう迅速に行わなければならない.さらに,注湯時において,溶湯を注いだ際に型崩れせず,冷却時に発生するガスを放出することが求められている.突き固め作業をVRによる立体視システムと力触覚呈示装置とを連携して,複数の人がコミュニケーションをとりながら技能を獲得していくことは技能伝承および人材育成の観点から有効であり,それを実際のOJT前に行うことで,短期間で,より効果的な技能伝承および人材育成を行うことができると考えられる.本委託業務は,ものづくりの技能伝承において,中小企業での技能伝承の高効率化に多くの貢献が果たせるものと考えられる.

委託業務における教育課程,教育方法等の創意工夫

本学の工学部機械工学科,情報システム工学科,電気電子システム工学科においては,学部2年次までに,ものづくりの基盤的な科目を学習するようにカリキュラムが組まれており,3年次から本格的な専門教育と実習によるものづくり教育が開始される.しかし,従来の教育体系では,実際のものづくり現場での作業経験がない学生がほとんどであり,“ものづくりの難しさや楽しさの感受”には欠けているのが現状である.

本委託業務では,バーチャルトレーニングと実習を融合することにより,インターンシップ派遣前後において一貫した教育プログラムを実施し,ものづくり知識と技能の獲得を効果的に獲得できる.また,加工法や成果物のデザインレビューを複数の技術者とともにコミュニケーションをまじえ納得がいくまで繰り返し体験することは効果的である.これらの知識と技能は,4年次の卒業研究においても,工学的な観点のみならず,企業ニーズも勘案した研究を行ううえでとても有益なものとなる.このような教育方法をカリキュラムに組み入れることで,4年次からの卒業研究をより効果的に履修することができる.本委託業務における教育課程,教育方法を実施することは本学の教育目標,教育目的に十分合致したものである.本委託業務は,専門教育系科目,実験系科目,実習系科目の間をうまく補完するものである.

実施体制等の創意工夫

本学では世界的水準の研究の推進,および研究・教育拠点の育成を図ることを意図して総合研究機構が設置されている.その中に学内共同スペースを申請委託業務に提供するシステムもすでに確立されている.学長の指導のもと,スペースを優先的に提供するなど本委託業務の活動を全面的に支援できる体制が構築されている.

評価体制

埼玉大学においては,平成16年に学内に教育・研究等評価センターを設置して,教育の成果・効果の検証を行ってきている.学内における様々な分野において公正かつ適切な評価を行うために,学外者も登用して第三者的評価組織と位置づけ,教育の成果・効果の検証については,教育評価部門が教育内容,運営体制,実施体制等についての成果・効果を検証し,適切な評価を行うとともに,改善の提言を行っている.
本委託業務については,教育・研究等評価センターにより教育内容,運営体制,実施体制等について評価を受けるとともに,自己点検としては,委託業務責任者と実施メンバーによる会議を適宜行い,状況を把握し,必要な改善を行う.さらに,国内の有識者による評価委員会を設け,年度ごとに報告書を評価委員に提出し,点検・評価をしていただき,指摘された事項に対して改善を行う.必要に応じて,評価委員には年度末に来学していただき点検・評価を受ける.これらを通じて,教育活動の状況を把握し,改善に努める.

委託期間終了後の方針

本委託業務の一部は,平成15年度より,学内経費(学長裁量経費,21世紀総合研究機構研究プロジェクト経費,総合研究機構研究プロジェクト経費)が認められ,視覚情報と触覚情報を融合したVR環境を活用したものづくり教育とコミュニケーション能力の育成について研究が行われた.本委託業務期間終了後も,全学的な支援を受け,さらに関連企業等からの支援を受け,自立的な運営を行う.
本委託業務の教育プログラムについても,全学教育・学生支援機構,工学部および情報メディア基盤センターとの連携,および地元企業との産学連携のもと,学部向けのものづくり基盤技術分野に加え,大学院向け先端技術分野の教育プログラムも開発し発展させ,継続的にものづくり教育を遂行する.

 

 































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