saitama univ.

20年度報告書 ---具体的内容


 

教職員と学生との関係を含めた実施体制等の具体的な展開

○取組代表者等:
取組代表者:佐藤勇一
取組担当者:綿貫啓一

 

○教育・研究組織:
工学部機械工学科教員
(教 授:佐藤勇一,堀尾健一郎,水野 毅,綿貫啓一,
准教授:池野順一,高崎正也,長嶺拓夫,
助 教:金子順一)
工学部情報システム工学科教員
工学部電気電子システム工学科教員
情報メディア基盤センター教員
非常勤研究員(楓 和憲)
教育実践補助者(ポスドク研究員,ティーチングアシスタント),
事務補助者(宮川真弓)

 

○連携する民間企業等:
川口鋳物工業協同組合
川口機械工業協同組合
川口木型工業協同組合
埼玉県産業技術総合センター

 

○対象学生
工学部全体(主として,機械工学科,情報システム工学科の3年次生)

独創性又は新規性

本委託業務は,設計・生産現場で抱えている技能伝承関連の諸問題を解決するため,新たなタンジブル型仮想共有環境システムを開発し,技術者および技能者に対して技能伝承および知識創出に関する教育を実践して,多種多様な「匠の技」を効率的かつ確実に体得することに大いに貢献するものである.本システムには,次のような特長がある.(1)膨大な知識の中から利用者が必要としている知識を容易に探し出すことが可能となっていること.(2)資料作成に多くの労力や資金を必要とせず,さらに過去に作成した資料を再活用できるような拡張性や柔軟性を有していること.(3)非明示的な知識である暗黙知を伝達しやすい形で提示されていること.(4)映像から獲得できる知識の質・量は,個人の知識,経験が大きく影響するために,個人の力量に依存しない形で提示されていること.つまり,映像に含まれる膨大な知識を能力によらず明示的に提示することが求められている.(5)擬似的,仮想的な「場」の共有を可能にするために,「場」の共有を妨げる時間的・空間的・規模的な制約を部分的でも克服していること.(6)従来のように,OJTを中心として技能伝承を行うのではなく,技術文書やビデオライブラリなどを活用し,それぞれのメリットを生かすことで伝達される知識の質の向上および効率化が図られていること.
 現場の技術継承や人材育成の問題は,最近になって「2007年問題」としてクローズアップされているが,本学ではそれを数年前から本格的に工学的な研究成果を踏まえて,現場での技術者・技能者教育の実践を行ってきている.高付加価値製品設計・製造を行うためには,基盤的技術や熟練技能伝承,新たな知識の創出,人材育成は重要な課題である.本学の現場での技術者・技能者教育の実践については,埼玉県川口地域の鋳物業界を中心に精力的に行われている.この川口地域は高度な基盤的技術を持つ全国有数の産業集積地域があり,地域の熟練技術・技能が失われれば,直接これらの地域の今まで以上の活力衰退にもつながる.そのため,熟練技術・技能伝承は非常に意義のあるものであり,本教育実践の遂行は地域貢献としても非常に重要なことである.これらの活動は,NHK,NHK World,テレビ埼玉,朝日新聞,読売新聞,日本経済新聞,日刊工業新聞,等でも大きく取り上げられている.また,愛知万博でも教育実践の一部を一般公開した.
これまでの教育実践活動では,基盤的技術である鋳造工程を教育事例として取り上げ,その際に必要となる形式知と暗黙知とを連携して設計・製造知識の技能伝承・教育支援を行うシステムの構築,さらに新たな高付加価値製品の製造知識を創出するバーチャルリアリティ空間内での対話,視覚情報,力覚情報,触覚情報を複合した没入型仮想共有環境システムの構築を行っている.これにより,高付加価値製品を設計・製作する際の「匠の技」や「場の共有」を仮想体験できるものであり,従来からのOJTと併用することにより効果があった.
 類似の活動としては,日本においても,技能の科学化・技術化の視点から,経済産業省やNEDOでも最近になって研究が開始されているが,まだ十分な成果が得られていないのが現状である.本学の実践活動は,技能の暗黙知と技術の形式知とを同期マルチメディアおよび知識工学の技術により連携し,知識の共有化を行う技能伝承システムと没入型仮想共有環境を組合せた技能伝承・技能者教育を実践しており,その活動は世界的にも先駆的なものである.これまでに,埼玉県彩の国次世代産業創出プロジェクト推進事業・大学シーズ事業化支援事業,NEDOのロボット実用化プロジェクトプロトタイプ開発支援事業等の大型プロジェクト,JSTサイエンス・パートナーシップ・プロジェクト講座型学習活動で研究や教育実践してきている.
 また,埼玉大学情報メディア基盤センターには,没入型3次元可視化装置CAVEが平成13年3月に導入された.当時,国内でもわずか5機関しか設置されておらず,埼玉大学への導入は先駆的なものであった.このCAVEは,4面のスクリーンにより構成され,液晶シャッターメガネをかけることで映像を立体的とらえることができ,観察者の位置や向きをフィードバックするヘッドトラッキング装置やワンドと呼ばれる3次元ジョイスティックによる物体操作を行うことができる臨場感あふれる立体視装置である.平成14年2月より,3次元立体視コンテンツの研究や教育への適用に関する研究会を設置し,平成19年3月までに25回の研究会を開催している.さらに,センター内には,没入型3次元可視化装置CAVEの他にも,積層型光造形システムや触覚呈示システムなどが設置されており,教育・研究に大きな貢献をしている.

 

 











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