saitama univ.

20年度報告書 ---具体的内容


 

学生教育の目標や養成する人材像のニーズについて

日本の製造業においては,生産拠点の海外移転による産業の空洞化が産業集積地域に深刻な影響を与え,特に,これまで製造業を支えてきた基盤的技術産業において熟練技能の衰退が懸念されている.また,高齢社会の到来,若者の製造業離れの社会現象により,後継者難などが生じ,日本の製造業の将来に危機的状況をもたらしていることが2006年度版ものづくり白書でも指摘されている.今後も高付加価値製品設計・製造を行うためには,基盤的技術や熟練技能伝承,および新たな知識の創出が不可欠となっている.埼玉県川口地域は鋳物等の高度な基盤的技術を持つ全国有数の産業集積地域があり,地域の熟練技術・技能が失われれば,直接これらの地域の今まで以上の活力衰退にもつながる.全国には他にも多くの産業集積地域があり,同様の問題に直面している.そのため,熟練技術・技能伝承は非常に意義のあるものであり,緊急に取り組まなければならない重要な課題の一つとして,非熟練者への効率的・効果的な教育が挙げられる.製造業の技術者・技能者の伝承・継承の必要性については,以前から指摘されているが,2007年問題で質的不足や量的不足の危機意識が強まってきている.この2007年問題に対する取組が種々なされてきているが,技能やノウハウなどの伝承に時間がかかり円滑に進まない,指導する人材が不足している,などの問題点を抱えている.現在,技能伝承においては,技術文書,ビデオライブラリ,OJTが代表的なものである.技術文書やビデオライブラリは作成に多くの労力や資金を伴い,作成後の使い勝手の悪さなどから,多くのメリットがあるにも関わらずあまり活用されておらず,大多数の工場ではOJTを中心に技能伝承を行っているのが現状である. 本委託業務は,VR技術とICTを融合したタンジブル型VR環境システムにより,新たなものづくり教育を実践するものであり,高付加価値製品設計・製造法,基盤技術や熟練技能の伝承法,人材育成法を身につけた技術者は企業が求めている人材に一致しており,本委託業務で養成する人材のニーズは高い.

委託業務の教育課程,教育方法等

本委託業務は,埼玉大学工学部で開発したVR(バーチャルリアリティ)技術とICT(情報通信技術)を融合したインタラクティブ型技能伝承・訓練システム,および情報メディア基盤センターに設置されている基幹ネットワーク・可視化システムを基盤として,新たに開発するタンジブル型VR環境システムにより,新たなものづくり教育を実践するものである. 本学の工学部機械工学科,情報システム工学科,電気電子システム工学科においては,学部2年次までに,ものづくりの基盤的な科目を学習するようにカリキュラムが組まれており,3年次から本格的な専門教育と実習によるものづくり教育が開始される.しかし,従来の教育体系では,実際のものづくり現場での作業経験がない学生がほとんどであり,“ものづくりの難しさや楽しさの感受”には欠けているのが現状である.そこで,インターンシップ派遣前に機械加工技術,素形材技術,技術・技能伝承法などに関する専門教育を十分に受けさせ,ものづくり基盤技術産業において熟練技能者から実践的な技術・技能を体得させる.さらに,インターンシップ派遣後は学内において,機械加工技術,素形材技術,技術・技能伝承法をバーチャルトレーニングと実習を繰り返し行うことにより,形式知・暗黙知・身体知を確実に内面化する.具体的には,3年次に本委託業務のタンジブル型VR環境を活用した体験学習を融合することにより,ものづくり知識と技能の獲得を効果的に行うことができる.また,加工法や成果物のデザインレビューを複数の技術者とともにコミュニケーションをまじえ納得がいくまで繰り返し体験することは効果的である.これらの知識と技能は,4年次の卒業研究においても,工学的な観点のみならず,企業ニーズも勘案した研究を行ううえでとても有益なものとなる.このような教育方法をカリキュラムに組み入れることで,4年次からの卒業研究をより効果的に履修することができる.本委託業務における教育課程,教育方法を実施することは本学の教育目標,教育目的に十分合致したものである. 大学の教員と企業の熟練技能者が密接に連携し,ものづくり基盤技術の知識,技術・技能伝承法を身につけたものづくり技術者をバーチャルトレーニングと実習を融合したあらたな教育方法で育成することが本プログラムの目標である.

 











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